私設Blog「黒曜石の図書館」

本、言葉、文化にまつわるエトセトラ。

書籍

「騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編」読了

読み終えて驚いたのは、何の疑問も残さずに村上春樹作品が終焉した、という点。 「ねじまき鳥」の改作だろうか、という感じもある。読後感は「騎士団長」のほうが遥かに爽やかだが。 第2部で新たに気になった語彙は「1984」と「宗教団体」だったが、ちらと出…

「騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア」読了

第1部を読み終えたので、印象など書き留めておく。 これは、集大成かもしれない。 損なわれた主人公、以前の主人公たちよりも「損なわれた」点を早々自覚している。 一人称は「私」になった。「僕」からの成長? 全てが終わってからの回顧という今までにない…

「私たちは生きているのか?」読了、思うことなど。

今日は一日中、教材研究で中島敦の「山月記」に取り組んでいた。 人間が人間の問題を考える時、媒介するものが「人間ではないもの」である事が面白い。 そして人間の定義は?とも悩ませられる。 虎になった李徴も、森博嗣ワールドのウォーカロンも、私たちの…

「老いる家 崩れる街」住宅過剰社会の末路

「現在約800万戸の空き家が 15年後には 2100万戸を超える… 3戸に1戸が空き家に!あなたのまち、将来、本当に大丈夫ですか?」 衝撃的な帯。 我が家(分譲マンション)は、街の中心部にある駅までは車で15分という比較的「新興」の立地にある。 街の中心部はよ…

寝る前に、詩歌

寝る前に本を読みたい。 でも続きが気になるようなものはダメだ、夜ふかししたくなってしまう。 詩や短歌、俳句がいい と最近気づいた。 どこから読んでも、どこまで読んでもいい。 開いたところを読めばいい。 詩歌は小説とは違って、自分の頭の中で再生す…

「本へのとびら 岩波少年文庫を語る」

宮崎駿監督が少年少女のために岩波少年文庫から50冊を真剣に選んだ。 意外にも、これらの本を読んだのは大人になってからだという。 震災後はファンタジーを作る気になれない、とも語る。 めでたしめでたしのファンタジーにとっぷりと安心して浸る子ども時代…

「蜜蜂と遠雷」

恩田陸作品は、「チョコレートコスモス」以来。 チョコレートが「ガラスの仮面」で、まだ途中までしか読んでいないがこちらは「ピアノの森」が近いか。 風間塵のキャラクターが、もはやファンタジーの世界。 16歳という年齢設定が失敗なのか?15歳ならまた違…

「チェルノブイリの祈り 未来の物語」

2015年のノーベル賞作家、スベトラーナ・アレクシェービッチによるドキュメンタリー。 通常、証言集、ドキュメンタリーならば本の冒頭部に事実関係がまとめられるものだと思うが、この本で「事故に関する歴史的情報」として掲載されているのは全ての証言の後…

「文学としてのドラゴンクエスト」

1986年にIが発売されて、30年愛されている国民的ゲームを「文学」という観点から紐解いた本書。シナリオライターの堀井雄二氏が早稲田大学で村上春樹の後輩にあたることに注目し、ドラクエと村上春樹作品の比較をするパートがメインになっている。 主人公に…

「陰翳礼讃」と ゆく年2016

「陰翳礼讃」で今年の読書は終了となった。(「女のいない男たち」も読んだけれど再読だし、感想はまた今度) 昔「春琴抄」あたりは読んだことがあり、谷崎潤一郎はちょっと耽美がすぎる変態文豪というイメージで食わず嫌いだった。しかし、「文豪失格」で谷崎…

そこで終わるか…「明暗」

良いところで終わってしまった。「明暗」。 この作品の顛末も、その後どんなものを書いたのかも、想像の余地を遺してくれたことになるかもしれない。奇しくも100年前に連載が終了した日にちょうど読み終わったらしい。意図していなかったので驚いた。なにか…

100回目の漱石忌

今日12月9日は漱石の命日。 今年はちょうど100年目ということで、NHK-BSではここ最近、過去の漱石特集のアンコール放送や新作の特番をたくさん放映している。 録画出来なかった番組もあるし、HDDの容量もかなり際どい。なかなか難儀した。 姜尚中氏がイギリ…

ジェイ・ルービン著「村上春樹と私」

村上春樹作品に人々が何故惹かれるのか。 私はそれを知りたくて村上作品を読んできた。 ジェイ・ルービン氏は「英語で読む村上春樹」出演されたこともある、村上作品を手がける翻訳者だ。 確か村上春樹作品の英語版の翻訳者は3人だったと思うが、英語版がな…

「吾輩は猫である」読了

少なくともこの文庫本を購入したのは2回目である。 下手をすると、3回目かもしれない。 やっと読み終わった。 最初のうち「吾輩」は、この先は自分は目撃していないことであるから、残念ながら事の顛末はわからない、とか言ってやめにしてしまうエピソードも…

「漱石の思い出」、「硝子戸の中」、「道草」と「夏目漱石の妻」

ドラマの感想、となると、「漱石の人生は波乱万丈で大変そうだなあと思いました。」で終わってしまいそうで勿体無いので、関連書籍も読んでみた。 「漱石の思い出」 漱石の妻鏡子夫人が、漱石亡き後に語り、娘婿であり漱石の門下生だった松岡譲が書いた。ド…

「デボラ、眠っているのか?」一気読み

森博嗣作品を読んだあと、世界が違う表情を見せる気がするのは、私が文系で理系がサッパリだからだろうか。Wシリーズ第4作「デボラ、眠っているのか?」を読んだので雑感など記しておく。まだ未読の方は、お読みになってからどうぞ。 今回の舞台は、「迷宮百…

昼メロか70年代少女漫画か。「虞美人草」

予備知識ほとんどなしで虞美人草を読み始めた。 冒頭から、宗近くんと甲野さんのどちらがしゃべっているのかわからなくなる。 ミステリ小説で冒頭に登場人物の名前が書いていることがあるが、あれはとても良いと思う。 甲野欽吾 27 宗近一 28 欽吾の従兄弟で…

夏目漱石「草枕」を味わう

以前読んだような気がするのだが、何か別の作品と混ざって記憶していたようだ。 ピアノが出てくる作品は、はて、なんだったか… 画工(えかき)の道中の話なのに、一向に絵を描かない。 それどころか漢詩や俳句を詠むばかり。 日本人で一番優れた漢詩を作ったの…

空腹時に読んではいけない「作家のごちそう帖」

当たり前のことなのだけれど、作家も食べて、生きていたのだなと肌で感じた。図書館で借りた本なので、備忘録を兼ねて気になった箇所と、行ってみたいお店、食べてみたいものを抜粋してみる。とにかく、ひたすら美味しそう。 夏目漱石(超甘党)神田淡路町「松…

「ソフィーの世界」

今週のお題「プレゼントしたい本」 中学1年の時に、話題になってるらしいと父が買ってきた。 私の本は私の本、父の本も私の本ということで、詳細は忘れたが父よりも先に読ませてもらったかもしれない。 冒頭は哲学もまだシンプルでわかりやすく、ソフィーの…

万葉集の魅力を再発見する

万葉集だか古今和歌集だか新古今和歌集だか百人一首だか… 和歌への関心が低く、どれがどれだかわからないナアと思っていた。 本歌取りトカナントカ、その歌単体では理解出来ないのも、面倒だという印象があった。 しかし知らないではちょっと勿体無いなと最…

大人も子どもも、今読むべき「モモ」

ミヒャエル・エンデ作「モモ」。 子どもの頃に (おそらく) 読んだ (はずだ、自信がなくなってきた。でも演劇を見たのは覚えている) が、たまらなく読みたくなって図書館で借りてきた。 モモのような人でありたい、時間を盗まれる大人のようにはなりたくない…

「金持ちは、なぜ高いところに住むのか 近代都市はエレベーターが作った」

先月の朝日新聞書評に掲載されていて興味を惹かれた。 運のいいことに市の図書館に入っていたので、取り寄せる。 「ラ・ボエーム」というオペラのDVDをぼんやりと鑑賞したことがあるが、舞台は1830年代のパリ。貧しい芸術家たちが、寒さに耐えながら暮らす屋…

「生きる哲学」(追記有り)

若松英輔氏を認識したのは、NHK Eテレ「100分de名著」の内村鑑三の回に出演されていたのを拝見した時。 穏やかで優しげな佇まいの中に、どこか悲しみがあるように感じた。 奥様を亡くされたことを番組の中で話されていて、納得した。 「生きる哲学」の中で若…

「これで古典がよくわかる」? いやわからない、でも面白い。

橋本治氏が源氏物語の全訳も手掛けた凄い人だと知り、手に取ってみることにした。 タイトルから想像する中身とは違った。 古典を本格的に勉強し始める前の、高校に入学する直前の春休みに読むのが最善かと思う。 苦手意識を持たなくて済むと思う。 古典は勉…

「世界を変えた10冊の本」

先月のKindle月替わりセールの対象だった。 思いつきで買った、当たりの一冊。 池上彰氏は、私の中では「週刊こどもニュース」のお父さんだ。 当時まだ小学生で、理解して見ていたわけではないし、それによって世の中を見る目が養われたとかそういう素晴らし…

「私の本棚」

以前から気になっていた本だが、図書館にあったので借りて、あっと言う間に読んでしまった。(読みやすかった、面白かった) 都築響一氏の紹介していたエピソードが良い。広辞苑しか持っていない呑んべえの大作家・稲垣足穂の話。 蔵書の重みで借家の床を抜き…

「行人」と後期三部作

行人を読み終える。 三部作であることを考えると、 彼岸過迄:松本叔父、家族に見放された須永 行人 :家族、世間と隔絶する一郎 こころ :現世に生きる意味を見出せなくなる先生(Kも?) 孤絶が進展していくと読むしかないだろうか。 行人だけを読むと、手紙…

源氏物語を学ぶ

大学は夏休みに入ったが、集中講義のため4日間一日中座学をしてきた。 (日程が判らず登録しなかったので、聴講。) 女性の外部講師の方だが、源氏物語を専門にされると、皆さんああいった優雅な雰囲気を纏うのか、優雅な方が源氏物語を専門にされるのか・…

「彼岸過迄」読了

吉本隆明氏が推理小説だと評していた作品。 冒頭の森本の話は何だったのかなという気もしたが、柄谷行人氏に解説によれば、「吾輩は猫である」に立ち返った写生文のスタイルだということ。 吾輩=敬太郎ならば、なるほど。 この作品、漱石は適当にタイトルを…

レポート完成、一息。

最終の手直しはまだだけれど、前述のレポートが一応の完成をみた。 芥川関連の本をようやく本棚に戻せる。 今回、文献の引用の仕方など基本的な事をすっかり忘れていたので、奇跡的に残っていた大学時代のレポートを恐る恐る開いてみた。 (漱石の「夢十夜」…

「夏目漱石を読む」を読む

吉本隆明氏の「夏目漱石を読む」を読む。 講演録なので、繰り返しなどが多く、正直に言うと読みづらいと感じた。 しかし今日の大学での講義を聞いて、見方が少々変わった。 曰く 人は文字を持ってから、整然とした理論に慣れてしまった。 頭の中で論理を組み…

「暗幕のゲルニカ」感想

「暗幕のゲルニカ」を読み終えた。直木賞を逃したようだが、それは残念なことだ。 「憎しみに端を発する暴力には屈しない」というメッセージを持つ「ゲルニカ」をテーマにしたこの作品。「直木賞なら読んでみようかな」という軽い動機ででも良いから、多くの…

「ことばへの旅 上」(やっと)読了

分量がやけに多い、全然進まないと思ったら、元は3冊の本だったらしい。 じっくり読むのには大変良い本だった。 名言から哲学する、という造りだ。 著者の森本氏の体験や経験を重ね、とても易しい言葉で語られるので、難しい内容も腑に落ちる。 しかしこの方…

巻き物としての電子書籍

コミック以外の本はkindleで統一するようにしている。 (最初の頃は品揃えの足並みが揃わず、kinoppyとhontoも併用していて、数冊散らばってしまった。不満。サービスの統合は果たして将来的にあり得るか??) 品揃えには最早なんの不満もないが、アプリの使…

電子書籍に望むこと

電子書籍に切り替えて久しい。 大変便利に使っているが、どうしても困ることがある。 本の厚さが不明なので、ペース配分がわからない。 残りの%は出るけれど、特に読み始めはなかなか%が減らず、やや途方に暮れてしまう。 辞書アプリで「インデックス機能」…

「人工知能は人間を超えるか」(7/17追記)

ロボット、人工知能には昔から思い入れがある。 火曜日、NHK クローズアップ現代+で「進化する人工知能 ついに芸術まで!?」の放映があることを知る。 進化する人工知能 ついに芸術まで!? - NHK クローズアップ現代+ お、っと思い録画だけする。 水曜日…

「老子・荘子」

大切な事は全部、老荘思想にある。 少なくとも私にとっては。 「論語」に手こずって、読み終えるのが遅くなってしまったけれど、これは私のバイブルになりそうだ。 ますます、他の人と話が合わなくなるけども。 ますます、厭世的になるけれども。 スパイスが…

「西方の人」から「聖☆おにいさん」まで

合唱を続けて今年で17年。 宗教曲はこの分野を語る上で避けては通れない道なので、自ずとキリスト教には関心を持つ。 関連書籍を幾つか、芋づる式に。 「西方の人」の皮肉な論調から思い出したのは、同じく芥川の「神神の微笑」。 「我々の力と云うのは、破…

君たちは、飲み会には喜んで3,000円を払うのに

500円の文庫本を買うのは渋りますね。 (嘆かわしい) 指導教官がこう仰ったのは今も忘れられない。 昨日ブックオフで状態の良い「行人」「こころ」を手に入れる事が出来た。 今日は新品の「草枕」「彼岸過迄」を入手。 漱石先生にどっぷりと浸かろう。 紙の本…

ホラー小説「若きウェルテルの悩み」

「あらすじ名作劇場」の「若きウェルテルの悩み」の回を観る。ストーカー男が、自殺をするというホラーだったことがわかり、衝撃を受けている。 読んだことがあるのだけれど、きっとその時も え?とは思いつつ、いや、ゲーテという凄い人が書いたんだから素…

対象年齢33歳以上?

芥川龍之介の「河童」を久しぶりに読む。「或阿呆の一生」を初めて読む。 卒論で芥川を選びながら、まだ読んでいない作品が随分あって、ずっと気にかかっていた。 「侏儒の言葉」はまだ途中だけど、こんなに良い作品だったのか。 漱石も、夢十夜、坊っちゃん…

「昭和元禄落語心中」の世界

Amazonプライムでアニメを配信していたのを見つけ、ちょうどコミック電子版もセール中で、そこからあれよあれよと沼にはまって行った。 与太郎が八雲師匠に出会ったのが、ちょうど我々の生まれ年周辺らしく、その辺りにも親近感を覚える。 最終巻が待ち遠し…

近代建築建築三昧

近代建築、明治〜に作られた建物が好きだ。 一番好きなのは、悩ましいけれど、旧北海道庁あたりだろうか。 「日本の近代建築 上下」は今までナントナク眺めて来た各地の様々な建物が、こういうわけであそこに建てられていたのか、と腑に落ちた。 「西洋館を…

「入門 哲学としての仏教」を読了するも。

哲学には昔から憧れとも言うべき特別な想いを持っている。 中学1年生の時に「ソフィーの世界」を、わからないながらも、楽しく読んだ。 寺社仏閣、仏像も好きで、仏教も勉強を是非したいと思っていたテーマ。 その2つが一緒にタイトルに収まっている。 しか…

「月舟町三部作」+1

印象に残っている本が皆、従来の紙の本だと気づかされる。 もうほとんど電子書籍しか買わないし、紙の本もスキャンサービスで電子化してもらっているくらいなのだが、物事はそんなに単純ではないのかもしれない。 歩き続けて、ちょっと草臥れてしまった、そ…

アリス・マンロー

電子書籍でない本は極力買わないことにして久しいのだけれど、憧れの新潮社クレスト・ブックスで、話題のアリス・マンロー。 要件が重なったらもう読むしかない、と挑戦。 流石にノーベル文学賞、噛み応えがあった。 でも、一度味を占めればもう、他の作家に…

「ムーミン」シリーズ 読了

講談社文庫の限定版カバーが洋書のようでとても気に入り、セットで購入。 初めは、ファンタジックで、ご存知アニメの世界ともまだリンクする部分が多く比較的読みやすかった。 ところが遂にはムーミン谷から一家が出て行くし、最終巻には登場もしないという…

「職業としての小説家」v.s.「村上春樹は、むずかしい」

たまたま同時期に続けて読んだ2冊。 村上春樹氏本人は、「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」などのインタビューでも応えている通り、自分の中の深部へ潜って書く、というスタイルをこのエッセイでも貫いている。 対して加藤典洋氏は、時代背景や様々…

「漢文の素養」「漢文力」読了

齢三十を過ぎて、また大学に通うことにした。 仕事を辞めて時間が出来たので、取り損なっていた高校教諭の免許を追加で取得しようと思い立った。 「漢文学概論」なる授業を取ったのだけれど、漢文、中国史、今までどうにも興味がわかなかったので、苦手意識…