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私設Blog「黒曜石の図書館」

本、言葉、文化にまつわるエトセトラ。

夏目漱石「草枕」を味わう

以前読んだような気がするのだが、何か別の作品と混ざって記憶していたようだ。

ピアノが出てくる作品は、はて、なんだったか…

 

画工(えかき)の道中の話なのに、一向に絵を描かない。

それどころか漢詩や俳句を詠むばかり。

日本人で一番優れた漢詩を作ったのは漱石だと漢文の先生が仰っていた。

確かに、シンプルだが画工の目線で美しく情景が詠まれている。

そうかと思えば英語の詩も引用されたり、美しいものの玉手箱のようだ。

 

漱石の美術論が書かれる作品、という説明がされるが、場面の描写と美術論が行ったり来たりして、フワフワした心地になるなという感想を持っている。

この世界観とフワフワした感じが何かに似ていると感じたが、思い出した。

夢十夜が非常に似た雰囲気だ。

しかし、旅先で出会う土地の人との会話は落語のように滑稽でもある。

江戸っ子漱石ならではの味わい。

 

特にストーリーを読む作品ではない。

言葉の美しさを味わうのに最も適している作品と言えると思う。

画工の年齢は「三十の今日は」とあるので、私を含むアラサーの、少し俗世間にお疲れ気味世代は、共感するところが多いのではないか。

 

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。

兎角に人の世は住みにくい。

 

ごもっとも。

 

さて次は虞美人草

 

草枕 (新潮文庫)