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私設Blog「黒曜石の図書館」

本、言葉、文化にまつわるエトセトラ。

「漱石の思い出」、「硝子戸の中」、「道草」と「夏目漱石の妻」

ドラマの感想、となると、「漱石の人生は波乱万丈で大変そうだなあと思いました。」で終わってしまいそうで勿体無いので、関連書籍も読んでみた。

 

漱石の思い出」

漱石の妻鏡子夫人が、漱石亡き後に語り、娘婿であり漱石の門下生だった松岡譲が書いた。ドラマの大筋はこの本から取られている。

印象深いのは漱石の神経衰弱による癇癪。ドラマでは第2話でしか激昂していないが、その後もあったようだ。

泥棒に入られたが着物は綺麗に直って帰って来たエピソードは実話だったらしい。

「坑夫」の怪しい青年のエピソードは大変短かい。よくあそこまで話を盛ったものだ。

千駄木の家(猫の家)の間取り図付き。

 

硝子戸の中(がらすどのうち)」

随筆。

幼少期を振り返るエピソードも含まれている。

漱石といい芥川といい、生い立ちにコンプレックスがあることが作家の悲劇であり、物を書く原動力になるものだろうか。

 

「道草」

晩年の漱石が初めて書いた自伝的小説。

ドラマでは第3話にあたるエピソード、縁を切った養父がしつこく訪ねて来て無心する

3話〜4話でずいぶん鏡子が冷たくあたるなという印象があったが、「道草」では夫婦の心のすれ違いが描かれているので、これを念頭に置いての脚本なのかもしれない。

興味深いのは、妻の不満に思う気持ちを漱石はちゃんとわかって書いているところ。だったら優しくしてあげれば良いのにと、読んでいて思うが…夫婦喧嘩は犬も食わないというか、論理と実生活はまた違うのか。

 妻にヒステリーの持病があったことが書かれる。

1話で鏡子が川に身を投げた話は事実ではないと思うが(?)、この中で夜中目を覚ましたら妻が剃刀を握りしめていたという話がある。そこからの着想だろうか。

自分では癇癪のことはあまり書いていないので、お互い、棚にあげた書き方なのかもしれない。

なお雨の中、なけなしのお金を渡しに行ったというのもドラマオリジナルか。

 

ドラマは夫婦のすれ違いはあったが、坊っちゃんのキヨのように大切に思われていることを鏡子は理解した、という描かれ方で幕を閉じた。

激動の時代にあって、内面で大変な葛藤があっただろう漱石も、ごく当たり前の明治の「日本人的夫」だった。

生き難かったかもしれないが、懸命に生きた漱石の姿に励まされる思いがする。

 

漱石の思い出 (文春文庫)

硝子戸の中

道草