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私設Blog「黒曜石の図書館」

本、言葉、文化にまつわるエトセトラ。

「文学としてのドラゴンクエスト」

1986年にIが発売されて、30年愛されている国民的ゲームを「文学」という観点から紐解いた本書。
シナリオライター堀井雄二氏が早稲田大学村上春樹の後輩にあたることに注目し、ドラクエ村上春樹作品の比較をするパートがメインになっている。

主人公に自分自身を投影して非現実世界に物語を体験すること、非現実世界と現実世界の二重構造など、確かに重なる部分がありなるほどと読む。
この30年の世相も、私が体験してきた時代なので、実感を伴いながら読む。

 

読み終えて、しかし、なにか物足りなさを感じる。
著者は「さやわか」氏、1974年北海道生まれ…など裏には書いてある。
しかし、あくまでも匿名で書かれている。感覚としては、ウェブ記事の延長のようだ。

さやわか氏は、どんな人物で、この30年を、ドラクエをどう体験してきたのか。
また、「堀井雄二氏はこう考えたのかもしれない、かもしれない…」と推論で終始する本書だが、だったら堀井雄二氏へ自論を投げかけてみてはどうなのか。

独占インタビュー!…残念ながらそのような試みはない。
柔軟な発想も面白いが、私たち一般人には叶わない事実の確認ということに挑戦してくれたら、本当に面白いものになると思う。

 

惜しい。

 

誰もが、何でも、発信できる時代になったのだなと思う。
ほとんど、ここに書かれている30年の間に変化してきたことだ。
この先時代は、ドラクエはどう変わってゆくのか。はたして。

 

文学としてのドラゴンクエスト 日本とドラクエの30年史 (コア新書)